文書作成日:2024/11/19

改めて確認したい労働時間の取り扱い

9月に厚生労働省から労働時間の適正把握に関するリーフレット「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう」(以下、「リーフレット」という)が公開されました。以下では、このリーフレットの内容と労働時間を取り扱う際の注意点についてとり上げます。

[1]労働基準法違反とされる取り扱い
 本リーフレットの内容の多くは「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の重要箇所となっていますが、今回は労働時間の端数処理に関して、以下の取り扱いが労働基準法違反となることが示されています。
 (1) 勤怠管理システムの端数処理機能を使って労働時間を切り捨てている
 (2) 一定時間以上でしか残業申請を認めない
 (3) 始業前の作業を労働時間と認めていない
 この中で、「(1)勤怠管理システムの端数処理機能を使って労働時間を切り捨てている」という項目については、勤怠管理システムの端数処理機能を設定し、例えば日々の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)をしている例が違反事例として挙げられています。一番のポイントは、労働時間であるにも関わらず切り捨てられていることです。この機会に、自社の勤怠管理システムの端数処理機能の設定を確認し、取り扱いに問題があれば対応を検討しましょう。

[2]労働時間を取り扱う際の注意点
 適正な労働時間管理を行うためには、そもそも労働時間の定義を確認しておくことが重要です。労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことを言い、使用者の明示または黙示の指示によって、労働者が業務に従事する時間は労働時間となります。
 具体例を挙げるとすれば、通勤ラッシュの回避等の理由で、労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着するようなケースがあります。このケースにおいては、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合には、労働時間に該当しませんが、業務を行っている場合は、黙示の指示があったとされる可能性があります。そのため、始業時刻までの時間に業務を行う必要がなければ、始業時刻になってから業務を開始するよう労働者に周知・徹底することが求められます。会社としては、後になって労働時間だとの指摘を受けないように対応しましょう。

 労働時間に関するトラブルは多くの会社で頻発しています。現在の労働時間の取り扱いを見直す際にお困りごと等ありましたら、当事務所までご連絡ください。

■参考リンク
厚生労働省「労働時間を適正に把握し正しく賃金を支払いましょう
厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。




12月2日から変わる社会保険の資格取得手続き2024/11/12
自転車の危険運転に対する罰則の創設とその対応2024/11/05
今年も11月に実施される過重労働解消キャンペーン2024/10/29
2024年10月より支給要件が見直しとなった特定求職者雇用開発助成金(成長分野等人材確保・育成コース)2024/10/22
厚生労働省調査からみる男女別の離職理由2024/10/15
連続する勤務や休憩時間に関するよくある質問2024/10/08
協会けんぽの被扶養者資格の再確認2024/10/01
30.1%まで上昇した男性の育児休業取得率2024/09/24
最大84円の引上げとなった2024年度の地域別最低賃金2024/09/17
企業に求められる過労死等防止のための対策2024/09/10
2023年度の労基署監督指導における賃金不払事案件数は21,349件2024/09/03
無用な解雇トラブルを防止するために知っておきたい解雇予告の注意点2024/08/27
厚労省審議会から示された最低賃金額改定「全国一律50円」が目安2024/08/20
電子申請が義務となる労働安全衛生関係の手続き2024/08/13
引き続きトップとなった「いじめ・嫌がらせ」の相談件数2024/08/06
2025年4月から厳格化される育児休業給付の延長手続き2024/07/30
増加する精神障害の労災支給決定件数 求められるハラスメント対策2024/07/23
来年4月に創設される「共働き・共育て」のための給付金2024/07/16
重要となる職場の熱中症予防対策2024/07/09
3年連続増加となった休業4日以上の死傷者数2024/07/02
特別休暇を設ける際のポイントと注目を浴びる孫休暇2024/06/25
今国会で改正された育児・介護休業法の概要2024/06/18
今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント2024/06/11
賃上げに取り組む企業への公的支援2024/06/04
労災保険特別加入者の給付基礎日額の変更2024/05/28
在宅勤務手当と割増賃金の算定基礎等の整理2024/05/21
注意が必要な36協定の「1ヶ月の時間数」の考え方2024/05/14
障害者雇用の現状と障害者を雇用する際の課題・配慮事項2024/05/07
企業の不妊治療への支援制度と助成金制度2024/04/30
今後注目が高まる仕事と介護の両立における課題2024/04/23
業務災害で死亡や休業が発生した場合に提出が求められる死傷病報告2024/04/16
今すぐ確認したい転倒災害の現状と防止対策2024/04/09
今年も4月より始まった「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン2024/04/02
労働基準監督署の「定期監督等」において違反件数が多い項目2024/03/26
労働者数が50人以上の事業場で求められる労働安全衛生法上の対応2024/03/19
3月分以降の協会けんぽの健康保険料率・介護保険料率2024/03/12
2024年4月1日から労災保険率が変更になります2024/03/05
広範な変更が予定される雇用保険法の改正動向2024/02/27
36協定を締結する際の注意点2024/02/20
4月より変更となる求人を行う際の労働条件の明示ルールの注意点2024/02/13
給与計算をする際に押さえておきたい端数処理の実務2024/02/06
民間企業の障害者実雇用率 過去最高の2.33%の実績2024/01/30
29.7%の企業が70歳まで働ける制度を導入2024/01/23
2024年4月から変わる無期転換に関する明示ルール2024/01/16
2024年1月から新設された育休代替要員等に対する助成金2024/01/09
今後数年のうちに施行される人事労務関連の法令改正2024/01/02
2024年4月1日より変わる裁量労働制2023/12/26
拡充されたキャリアアップ助成金「正社員化コース」2023/12/19
退職後に引き続き傷病手当金を受給する際のポイント2023/12/12
2024年4月から変わる有期労働契約の更新上限に関する事項2023/12/05
年休の取得率 初めて60%超え2023/11/28

お気軽にお問い合わせください